森林浴―或る弟の手記―
だからこそ、空想の中で、香保里姉さんを蔑すんでいるのだろうか。
私はそんなふうに思っていました。
この答が出たのは、本当に最近のことにございます。
一昨年の香保里姉さんが亡くなった事故は……話が逸れてしまいますね。
このことは順を追って説明させて頂きます。
何せ、書きたいことはまだまだ沢山あるのですから。
では、話を、佐保里姉さんが森に行っていたことに戻しましょう。
佐保里姉さんが森で何をしていたか分かったきっかけは、ある日の朝でした。
その日は前の日からの台風の影響で、酷く荒れた天候でした。
前日、使用人たちが窓や扉に板を打ち付けてはくれましたが、乗り切れるものなのか、幼い私は不安でありませんでした。
ごうごうと鳴る風に、ばたばたと屋根を打つどしゃ降りの雨。
危ないから、とその日は父に小等学校を休むように言われていました。
風邪を引いたわけでもないのに学校を休むことに、私は少しの罪悪感を抱かずにはいられませんでしたが、
それと同じくらいに、元気なのに学校を休むことに高揚も感じていました。