森林浴―或る弟の手記―
佐保里姉さんが手伝っていたのは場末のスナックで、薄汚い店でした。
私は売り上げに貢献するつもりで、しばしば店に足を運び、部下に酒を振る舞いました。
店のママは喜んで佐保里姉さんに感謝し、佐保里姉さんも活き活きと働いていました。
働きに出ることを許して正解だった、と佐保里姉さんの笑顔を見る度に思いました。
そんな中、佐保里姉さんはある男と知り合ったのです。
客として店に来たその男は、表と名乗り、小さな工場を営んでいるとのことでした。
表はなかなかにハンサムな男で、その面立ちは何処と無く嘉一さんに似ておりました。
表は佐保里姉さんを気に入ったらしく、足しげく店に通っては、佐保里姉さんに話しかけていたそうです。
そんな二人が恋仲になるのに時間はかかりませんでした。