【完結】君が教えてくれたコト
あの彼女らしき人はいない。
式のギリギリの時間になると教室の扉が開く。
入ってきたのはなかなかのイケメンとかなり可愛い女子だった。
だいぶ仲の良さそうな雰囲気。
イケメンに可愛い彼女は付き物ですよね。
イケメンの方は俺の後ろの席に着いた。
一応、クラス割りのプリントを見て名前を確認する。
槇野弘貴(マキノ ヒロキ)。
「なぁ」
後ろの席に着いたイケメンは俺の背中をトントンと叩いた。
「え?」
「苗字『穂高』っていうんだな?」
「うん?そうだけど」
「さっき、ちよ子(チヨコ)と…ちよ子ってさっき一緒にきた奴なんだけど、あいつと『穂高』って名前がカッコいいなって話してたんだよ!」
…普通に話し掛けてくれてる。
同じ年頃の人に他愛のない話をされるなんて何年ぶりだろう。
「穂高?」
「…よく言われる!完全に名前負けしてるけど」
本当によく言われた。
そしてよく「名前負けしてる」と、からかわれた。
「名前負け?何言ってんだよ!どこも名前負けなんてしてないし…そもそも俺は名前負けなんて言葉は嫌いだ。自分の名前がカッコいいなんて自慢するところだろ?なんで他人に非難されなきゃいけねぇのかわからない」
…俺、このイケメンにもっと早く出会いたかった。