アザレア
ウチ、と言われ、てっきり誠の家に連れて行かれるのかと思っていたのに、半ば無理矢理乗せられたタクシーが到着した先は全面ガラス張りの高層ビルだった。
『ちょ、ちょっと、どこ行く――んですか!?』
『…………』
訳も判らずに慌てふためく私の質問には答えようともせず、誠はビルの中を突き進んだ。
そして乗り込んだエレベーターが最上階を告げると、暗がりのフロアで唯一明かりの漏れる部屋のドアを断りも無しに開け、
『あれ? お前、予定あったんじゃ』
『もう終わった』
『はぁ!? まさか……!』
残業代わってやった意味ねーじゃん、と喚く――後に八嶋さんと紹介された――男性を尻目に、
『こいつ、ウチで働くから』
ちょうどドアに隠れる位置にいた私を引きずり出して話を進めた。
当の本人である、私の意思など無視したままで。
『ちょ、ちょっと、どこ行く――んですか!?』
『…………』
訳も判らずに慌てふためく私の質問には答えようともせず、誠はビルの中を突き進んだ。
そして乗り込んだエレベーターが最上階を告げると、暗がりのフロアで唯一明かりの漏れる部屋のドアを断りも無しに開け、
『あれ? お前、予定あったんじゃ』
『もう終わった』
『はぁ!? まさか……!』
残業代わってやった意味ねーじゃん、と喚く――後に八嶋さんと紹介された――男性を尻目に、
『こいつ、ウチで働くから』
ちょうどドアに隠れる位置にいた私を引きずり出して話を進めた。
当の本人である、私の意思など無視したままで。