アザレア
だって私は知っている。

「必要ない訳ねぇだろーが。寧ろ助かってる」

そうすれば同じ常套句でありながらも、私が望む言葉をくれる事を。

どんな酷い寝癖がついていようがお構いなしに、私の髪に、唇に、キス落とす事を。


与えられた部屋、定期的に贈られる数々のプレゼント、それが今の私には似つかわしい役割。
必要なのは“部下”としての私で充分。

でなければ私は勘違いしてしまう。
忘れてしまう、

「随分と伸びたな」

「社長が伸ばせとおっしゃたのでしょう……?」

まるで壊れ物を扱うかのように優しく私の髪を梳く、その左手に嵌められた指輪の存在を――…



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