アザレア
――あれは私が彼の“所有物”となって数日後の事だった。
社長が、……誠が、結婚していると知らされたのは。


勿論、直接聞いた訳ではない。

既にそういう関係だったからか、単に言いたくないだけなのかは判らないけれど、誠は未だ“その話”を私にしようとはしない。


偶然知り得る事がなければ、私は何も知らないままで……もしかしたら誠には話す気さえ無かったのかも知れない。


『よぉ、誠! 奥様とは上手く――って、……え!?』

知るきっかけとなったのは、八嶋さんの一言だった。


まさか私がいるとは思ってもみなかったのだろう。
ノックもそこそこに社長室に入って来た八嶋さんは、突然現れた八嶋さんに驚く私以上に吃驚していた。
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