アザレア
――あの後、社長は私の吐瀉物を嫌がる素振りも見せず片付けてくれた。


俺もついて行く、と言い張る社長を諦めさせるのは大変だったけれど、社長無くしてはミーティングが始められず――…


時計を見遣れば、そのミーティングにも遅刻決定で謝罪を繰り返す私に、

『……何に対しての謝罪だよ?』

そう言い残し、家を出た。


社長が部屋からいなくなったのと同時に訪れる喪失感。
ぽっかり開いてしまった胸の穴に、風が吹きすさぶ。

いつもはそれをやり切れない気持ちで過ごしていたけれど、今日ばかりは社長が傍にいない事に安心を覚える。


近くに居すぎてしまった。
だから――錯覚、してしまった。

社長の隣に立って良いのは、私じゃ、ない。
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