アザレア
これが業務命令ならいざ知らず、彼が不機嫌を露わにするのは決まって業務外のみ。

ならば、私は彼の要求に応える必要性は無く、すっかり口癖となってしまった台詞を繰り返すだけ。


「社長は社長ですから。……それに私は社長の忠実なる部下の一人です」

――喩え昔ながらの、馴染みであったとしても。


昔は昔、今は今。
現状、私達の間には絶対的な壁が聳(そび)え立っていて。

社長の忠実な部下――…


そう口にしたのは私なのに、私達の関係を表すのに相応し過ぎるその言葉が、酷く胸を締め付ける。
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