アザレア
『連絡が俺に入るのは、俺が――『失礼します』

数ヶ月前の、倒れたあの日。

いつになく緊張しているような誠が話を切り出した――途端、恐らくは様子を見に来たのだろう。
突如として病室に現れたのが、先の看護師さんだった。


『気分は……起きてお話できるくらいだから、もう大丈夫そうですね。血圧を測るので右腕を出して下さい』

決して広くはない病室内を忙しなく動き回りながらも、看護師さんは笑顔を欠かさない。

緊迫していた空気を吹き飛ばすかのように、少し高めのトーンで話を続ける、

『今ね、ちょうど空いてきたんです。歩けるなら診察室まで案内しますが、いかがなさいます?』

『はい。歩けます』

『あ、それと。問診表のお名前、間違えて記入されていましたよ。一ノ瀬、って言うのは旧姓かな?』

『……え?』

私には――到底、理解しがたい話を。
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