アザレア
その後の診察で妊娠が判明して。

マンションに連れ戻された私はいつになく誠に詰め寄り、そこで初めて知った真実は衝撃的なものだった。
――あくまで私にとっては、なのだけど。


『メイに何かあれば連絡が入るのは当然だろ、旦那なんだから』

何を今更、と呆れたように言う誠は、寧ろ何で知らないんだ、と頭を抱え、

『大体、給料明細とか見ない訳?』

『支給額なら通帳でも判りますし』

『んじゃ、ここに来た当初に俺が贈った指輪は?』

『あれ、指輪だったの!?』

『……あぁ。開けてすらいない、ね』

『も、申し訳ございません……!』

咎める権利は私にある筈なのに、何故か頭を下げる立場になってしまった。
< 52 / 55 >

この作品をシェア

pagetop