LOVE・ラブ・らぶ-先生と描くsweet life-



さっきまで賑やかだった部屋がテレビの音だけになった。


「なんか悪ぃな。毎年年越しはこんな感じなんだ。姉貴が先に潰れて、親父たちも寝て、結局、カウントダウンは一人。」


先生は笑う。


「ううん、楽しかった。施設にいた頃はみんなでお祝いしたけど、出てからは何もなかったもの。バイトもないから仕事で時間潰せないし、」


先生が歩の頭を優しく撫でた。
  

「これからはずっと一緒だよ」


と……。




歩の涙腺が崩壊寸前なところで、


「歩、今眠い?」


と聞いてきた。


「微妙かな。でもどうして?」


「連れて行きたいところがあるって言ったろ?」


「ああ。忘れてた」


「今から行くか。外出るから寒くない格好な」



と先生は指でクルリと車のキーを回した。

< 279 / 289 >

この作品をシェア

pagetop