ラブレター・ズ
秋が想い出せないんだ
涙で視界が滲んで想い出せないんだ
君と終わった時間が切なくて想い出したくないんだ
「みっちゃん、四季の中ではどれが好き?」
「四季?」
「そ、四季」
美鈴が運転しながら言った
「……秋」
「…秋?」
「…秋」
「読書の秋?」
「違う」
「寒くもないし暑くもないから?」
「半分正解」
「半分??」
「衣替えが楽だから」
僕はまっすぐ前を見ながら肩を竦めて言った。
美鈴はふーん…と一言だけ言うと黙って運転していた。その静かな横顔は、どこか車道じゃない、遠くを見ているように感じた。次の瞬間、僕はなんとなく景色に違和感を感じた。美鈴がいつの間にか反対車線を走っていたことに気づいたのだ。僕は信じられない気持ちと目の前の遠いところに車を確認すると、前を見たまま美鈴に声をかけた
「…前から車来てるよ?美鈴!」
「…えっ」


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