ラブレター・ズ
冬はいいよね
鼻の天辺が冷たくて
凍える手を重ねて
生きている実感ができるから

季節なんてわからない
何度目かの春が終わり何度目かの夏が過ぎ秋は色あせて冬は凍てつく氷に変わる

心の支えは物言わぬ写真
もう二度と会えない君を
忘れまいと必死になって想ってる
美鈴のあの明るいひまわりみたいな声が今でも頭の中で響いている
「みっちゃん!」
想い出が色あせていく
行かないでと小さな子供のように泣いて追いかけようとした僕を、太陽が背中を暖めて止めてくれた
それが、今僕の左隣にいる彼女
黙って、何も言わず、僕の話聞いてくれた。
暖かい彼女は声を殺して静かに涙を流していた。 
僕はギョッとして苦笑いしたあとに、彼女の肩にそっと頭を預けた。
そこに彼女も頭を預けてきた。
縁側に重なる二人を、外からひまわりが見下ろしていた。その後ろに、いつだったか君が好きだと言っていた入道雲が空を覆っていた。
雷鳴が響き渡る空に生暖かい風が僕の色あせた心を乗せて舞い上がった。

end
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