死への救急搬送
「もうN脳外科へ向かっています。奥さんは脳疾患ですので脳外科へ運びます」
「だから透析患者には脳外科だけでは対処できないので転送になるから無理です。言っていることがわからないのですか。死んでしまいます」
「腹膜透析の時間が迫っています。疾患の処置と緊急透析をしないと死んでしまいます。言っていることが分からないのですか」
「今年の3月には腎臓摘出手術もR病院でしています。だから連絡をとってみてください。どうしても無理だと言うのなら他の総合病院でもいいからそっちへ搬送してください」
「せめてZ病院の横川先生に問い合わせをしてください」
何度同じことを言っても聞き入れてくれない救急隊に絶望感を抱きながらも必死で総合病院への搬送をお願いし家内の病歴を説明しました。
しかし救急隊員はまったく私の話など聞く耳持たずで無視です。
5分以上同じようなやりとりが続き、私は叫ぶように必死でお願いしました。
おそらくすごい形相だったと思います。
このままでは死んでしまう。
頭の中を「死」「死」「死」の言葉が浮かびます。
「どうして私の言っていることが聞き入れられないのですか」
「だから脳疾患なので脳外科へ搬送していると言っているでしょう」
「だめです。命が持ちません。総合病院へ搬送してください。だいいちN脳外科などどこにあるのかも知りません」
すると救急隊員はS市からT市へ向かう途中にある遠い場所の脳外科の位置を私に伝え
「わかりますか」
「わかります。しかし脳外科では・・・」
プツン
電話が切られました。
唖然とした瞬間
死ぬ
死ぬ
このままでは死ぬ