interlude
次の日は抜けるような青空。

また夏が始まるのかと思うぐらい
空は澄み渡っていて、蝉の声も盛んだ。

おまえたちも求愛しているのか?

残念ながら陽へのオレの声は届いていないみたいだ。

今夜のステージのセッションに向かうため駅まで歩いていた。

ジーンズのポケットのケータイが揺れる。


陽??

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おとといは悪かったな。
陽と朝まで付き合ってくれたんだって?
ありがとな。
また埋め合わせする。
マサ




マサ…

陽は、箱根に行ったことを
マサには言っていないらしい。

後ろめたい?
そりゃマサには言えないよな。



その夜のステージは散々だった。
全然集中出来ない。


ピアノを演奏する指が思うように
動かないのだ。

ジャズボーカルの女性とも
何回か演奏したことはあるのだが、
そうでなくとも、ドラムともウッドベースとも
今日はお互い揃わず
やきもきしたステージになってしまった。

「隼人どうした?」

と店のマスターにまで言われる始末。

「指が使いすぎで」

なんて適当に言って
今日のメンバーに謝る。

あぁ今日はほんと散々だな。
一応自分の仕事には誇りを持っているし、
音楽でまあなんとか食べていけるぐらいの
自分の境遇にも感謝しなければいけない。
観客はわざわざ金を払ってみに来てくれるのに。



陽が連絡くれないからだ。

その辺にあったゴミ箱を一蹴り。

らしくないなオレ。

平常心に戻ろうと
月を眺めながら思う。

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