You and I
だけど
きっと樹里の事だ。
“手術、痛い、からやだぁぁー。”
とか言って、ビビってるだけだろ。
「樹里、そんな心配すんなって。手術なんてあっという間だよ。」
ポンと肩を叩いて
声を掛ける僕。
しばらく続いた沈黙は
やがて大きな不安を僕に与えて
樹里の揺れる瞳を
ただ、見つめる事しか出来なかった。
「…いい。」
「え?」
やっと口を開き、ポツリと呟いた樹里の言葉は
僕の耳には届かなくて。
「樹里、聞こえ、なくてもいいー…。
このまま、でいいのー。」
何でだろう。
僕の事じゃないのに
まるで自分を全て否定されたような
そんな気分。
だけど―――…
「…何で?」
やっぱり、僕には納得いかなかった。
「せっかくよくなるのにそれを無駄にすんの?」
樹里がそれでよくても
僕はどうしても納得出来ない。
「樹里、贅沢だよ。聞こえなくていい、なんて本当は嘘だろ?」