You and I


だけど
きっと樹里の事だ。


“手術、痛い、からやだぁぁー。”


とか言って、ビビってるだけだろ。




「樹里、そんな心配すんなって。手術なんてあっという間だよ。」

ポンと肩を叩いて
声を掛ける僕。




しばらく続いた沈黙は
やがて大きな不安を僕に与えて
樹里の揺れる瞳を

ただ、見つめる事しか出来なかった。





「…いい。」

「え?」



やっと口を開き、ポツリと呟いた樹里の言葉は
僕の耳には届かなくて。




「樹里、聞こえ、なくてもいいー…。
このまま、でいいのー。」



何でだろう。

僕の事じゃないのに
まるで自分を全て否定されたような

そんな気分。






だけど―――…



「…何で?」


やっぱり、僕には納得いかなかった。



「せっかくよくなるのにそれを無駄にすんの?」



樹里がそれでよくても
僕はどうしても納得出来ない。




「樹里、贅沢だよ。聞こえなくていい、なんて本当は嘘だろ?」




< 24 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop