You and I
「…聞いてた?話…。」
「…ちょっと、遠かったから、あんまり、聞こえなかった、けどー…。」
「そう…。」
よかった。
樹里には聞こえない方がいい。
「樹里、あのさ…。」
「うんー?」
「…いや、あ、あのさ。」
って、早く言えよ!
ぐしゃぐしゃっと髪を掻き上げて
僕は深呼吸をする。
ひゅうっと冷たい風に
僕は樹里の前に立った。
「ごめんな!あんな事言って…。
本当、ごめん。」
「…なぁたん…。」
照れくさくて
視線はやっぱり地面に向いてて。
それでも、ちゃんと謝りたかった。
ちゃんと、伝えたかったんだ。
だけど―――…
「…………?」
返事のない樹里に
僕は恐る恐る視線を彼女に向ける。