You and I
「もし、耳が、ちゃんと聞こえる、ようになったらー…。」
「うん…。」
ぐすっと鼻をすすった樹里が
僕を、真っ直ぐに見つめる。
その瞳がとても
綺麗で。
「もう、なぁたんが、樹里の事、起こしてくれないってー…、一緒に、学校も行って、くれないってー…。だからぁー…。」
「……それで、そのままでいい…って?」
僕が樹里を気に掛けなくなるから
今のままでいいって?
それって……。
オレンジ色に染まる彼女は
夕日に負けないくらい顔を真っ赤にしてる。
あぁ、どうしよう。
今、彼女を無償に抱き締めたい。
「樹里?」
「なぁにー…。」
僕は緩む顔を堪えて
「きゃ…!」
彼女をめいいっぱい、抱き締めた。