雨の音は聞こえないのに
ベランダの窓からは夜の空が見えるけれど
雨は闇に溶けて認識しにくい
不思議に、窓を見つめることはしても鍵を開けてベランダに出ない私

ココアが早く飲んで、と白と茶色のマーブルを描いてる
私が息を吹きかけたら、ココアが窓に話しかけた
窓が白く曇って返事した

私はマスカラののった睫をバサバサ

微笑んだら窓に映った私が微笑んだことに気づいた

ハリネズミが悲しげに笑ってる

頭の茶色いハリネズミは頭を垂れた

窓から離れてカーテンを閉める
部屋に明かりが点いたけど
外の明るさのほうが居心地が良さそうだ

ココアが時間切れ、と少し冷めたようにいった
私はココアをゆっくり一口飲むとこういった

「甘い」

マスカラののった睫は必死に透明な雫を支えているけれど、とうとう我慢できなくて落としてしまった。でも、それは私の頬を伝うことはなく、マスカラののった睫を伝って真っ直ぐ床に落ちていった

私が床に崩れ落ちてわんわん泣きたい気持ちをこらえて透明な雫に変えているとき、外の雨は遠慮することなく泣いている

どこかでサイレンの音が聞こえている

私にはその音が永遠に聞こえた




end
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