失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
「大丈夫ですか」
声をかけると彼女は俯いたまま首を横に振る。どうやら意識はあるみたいだ。
どうするべきか、と逡巡する。
警察に連れて行くか、本人をタクシーに乗せるか…。
「とりあえず、大通りまで歩けますか?」
返事がなかったけれど、俺は彼女の肩を支えて立たせる事にはなんとか成功した。傍らに置かれたカバンも俺が持ち、ゆっくりと歩き出す。
思ったよりも大丈夫そうだ。
これならタクシーに乗せてでも自力で帰れそうだ。
――なんて、考えは甘かった。
「うっ…ぎもぢわ…」
ヤバイ、と思った次の瞬間には彼女は俺の手から逃げるように道端に膝をついて吐いていた。
あーぁ…。
自販機が目に入り、スポーツ飲料を買った。
これはもう警察にまかせてしまったほうがいいかもしれない。
警察が対応してくれるかどうかはわからないけど。
苦しそうに咳き込む彼女にポケットティッシュを差し出し、背中をさすってあげる。