失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
「あれ、マユちゃん」
「お疲れさまでーす」
月曜というのもあって客がまばらなのを確かめてからカウンターの隅に腰を落ち着けた。
客として来るのは久しぶりだけれども、相変わらず良い雰囲気の店内にホッとした。
地下にあるこのバー・エリザは間接照明だけを置き、暗い、と思わせないギリギリのところまで明るさを落としている。
これだけ大人の空間を見事に演出している所もなかなか無いんじゃないだろうか。
ここで私は週に2日だけ仕事をさせてもらっている。
私の仕事相手がこのバーの中央にどっしりと、ひっそりと居座っているのは見なくても知っているけれど、今は何も考えたくないため、あえて視界に入れないようにした。