失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
明日もお互い仕事に学校というコトで今日は飲み足りなさを我慢してお開きになった。
「今日は私のおごりです!払わせてください!じゃないとわたしの気が治まりませんので!」
と、払おうとした俺の手は押し退けられてしまった。
「じゃぁ、次は俺に奢らせて」
なんて、図々しくも次をほのめかす俺に彼女は嫌な顔1つせずに「はい」と笑顔を浮かべてくれた。
久しぶりの楽しい時間はすぐに過ぎ去って、俺たちは駅で別れる。
家まで送るべきかと悩んだが、独り暮らしだというしやっぱりそれはさすがに不味いと思い時間も比較的早かったし、今日の所はやめておいた。
「今日はわたしのお礼に付き合ってくださって、ありがとうございました」
「ちょっとは元気でた、のかな」
彼女の乗る電車がホームに滑り込んでくる。風が彼女の髪をさらった。
「エリザのジャズシンガーが元気ないと、お酒までしおれちゃうからさ」
「え…、羽賀さ…知って」
―ドアが閉まります
警告のアナウンスとベルで彼女の声はかき消される。
「じゃ、気をつけて帰って。おやすみ」
彼女を乗せた電車が夜の闇へと消えていくのを俺はなんとなく見ていた。