失恋レクイエム ~この思いにさよならを~

8時まであと三十分。

羽賀さんからの連絡は無いからきっと来ないだろうし…その飛び入りの子の演奏でも聴きながら今日はのんびりしようかな、とプランを立てる。

とりあえず、カウンターに座ると酒井さんが一杯出してくれたので飲むことにした。

「あれ、マユは今日は非番?」

ギャルソンの一人、1つ下の透(とおる)が通りがかりに声をかけてくる。
彼はわたしと同時期くらいに入ったバイトでわりと仲が良い。

弟みたいでかわいいんだよね、コイツ。

「うんー、酒井さん浮気ものなんだもーん」

 ねー聞いてよーと彼の腕に手を絡める。
ここのギャルソンの服は白いYシャツに黒いパンツと黒いロングサロン。肘の少し下までまくってるYシャツの感じがすごく良い。

「マユちゃん、それ誤解されるからやめようね」

「ははは、じゃぁ今日出るのは酒井さんの愛人なわけね」

「コラ、透まで。男の子だよ、今日の飛び入りは」

「あ、そうなんですか」

「げー、ヤローかよ、つまんねーの」

「とおるー」

透は酒井さんのお小言から逃げるように持ち場に戻っていった。

相変わらずだなぁ。

どっかつかみどころのない透。
彼目当てに来るお客さんも多いとかなんとか。まぁ、あんだけ甘いフェイスだったら頷けるけど。
さっきさりげなーく触った腕もみかけの割にはしっかり鍛えてるっぽかったし。

甘いフェイスって言えば羽賀さんも負けてない。

明るめの茶髪とくりっくりの二重の瞳が童顔というか、ジャニーズ系?笑うと目がふにゃってなって可愛かったなぁ。

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