失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
半ば混乱しつつ、次に視界に入ったのはその枕の向こうのコンポ。
私を目覚めさせたヒーリングミュージックはここから放たれていた。
木目の綺麗なそれは見るからに高そう。私もこういう高級感のあるのが欲しいと思っていたところだった。
良いな、なんて眺めている場合じゃない。私はやけにかったるい身体をなんとか動かし、上半身だけを起こした。
と、そこで気付く。
服が、昨日と同じだ。
本当にサーっと顔から血の気が引いていくのがわかった。
「ここ、どこ…」
昨日、結衣たちと別れた後、バー・エリザに行って…。とりあえず、お酒ーとかなんとか酒井さんに言って・・・。
「ダメだ、記憶がない」
「やっべ、遅刻する」
ドアの開く音と一緒に飛び出てきたのは、見たこともない男の人だった。