失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
言葉もみつからないでいるわたしに羽賀さんは、だから、とわたしの失恋とは比べ物にならないくらい小さいんだ、と言った。
それなのに、もう半年近くも忘れられずに引きずっている、と。情けない、と自嘲した。

「それは、違うと思う。だって…付き合った付き合わないとか、長い短いとか、そんな事で想いの大きさは量れない。そもそも、比べられるものじゃないと思うし…。引きずることが悪いことだなんて誰が言ったんですか?わたしは…わたしは、そんなすっぱり忘れられるくらいの恋愛なんか恋でもなんでもないって思います。だから…」

羽賀さんの瞳を真っ直ぐ見つめて、わたしは言った。

「だから、目一杯、引きずって悔やんで嘆いたっていい。わたしはそう思います……って、自分に言いたかっただけなんですけどね。へへ」

照れ笑いでごまかすと、羽賀さんは「ありがとう」と茶化す事無く言ってくれた。

「羽賀さんが、好きになった人ってどんな人でした?…あ、もしイヤだったら良いですからね、話さなくて!」

「大丈夫だよ。そいつは職場の同期なんだけど、いつも笑顔でちょっとおっちょこちょいな所もあって…けど、人の気持ちを考える事ができる子、かな。俺はアイツの笑顔にいつも救われてた」

想い人の事を話す羽賀さんの声が、表情が、全身がその人の事を好きだと云っているのがわかって喉の奥が熱くなった。その想いが自分とシンクロして増長して込み上げてくるのを必死で抑える。
その人がすごく羨ましい。こんなにも、羽賀さんから思われているその人が。

「優しい人なんですね」
「うん、こうなった今でも普通に接してくれてる。毎日顔合わせなきゃいけないのが結構ツラいけど」
「けど、嬉しくもある」
「うん、そう。まさにそんな感じ」

羽賀さんは笑った。今にも泣きそうな顔で。
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