失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
◆
『俺はまがいなりにも、大学の講師で君は俺の生徒で…、なのに…その、講師の俺がこんな事を言っていいものなのかとずっと悩んで…、つ、つまり、何が言いたいかというと……』
それは、大学2年に上がったばかりの春だった。
薄手の上着がいるすこし風の涼しい季節。
先生からのお誘いにわたしは浮き足立っておろしたてのパンプスで街に繰り出した。
ちょっとこじゃれた喫茶店、渋いBGMが耳に心地良く馴染んで。
向かい側に座ってわたしを見つめて、先生は慌てていた。
大学では決して見れないその姿に愛おしさが募る。
先生が言おうとしていることが皆目検討つかず、わたしはただ先生を見つめ返す。
そして先生は言った。
『つまり…君が好きだ』
先生は…わたしの事を好きだったんじゃないの?
『君の事、大切にする』
あの言葉は、嘘?
コーヒーカップに添えられた左手にはまる指輪に窓からの光が反射する。
そんなもの、あの時にはなかった…。
『真弓を忘れようと、君の働くあのバーに高嶋さんと一緒に行ったんだ…けど、やっぱり無理だった』
高嶋さんて…誰の事。
忘れようって何を。
『あの人は新しい彼氏か…?』
誰の事を言っているの?先生、私は今、あの喫茶店で、先生の告白を受ける、幸せな時を迎える大学2年生のわたしだよ…。
どうしてそんな事を言うの、せんせい。
「……ん、時森さん!」
肩が揺すられた振動で一粒の涙が頬を濡らす。
その感覚がリアルに感じられて目を開けた。
『俺はまがいなりにも、大学の講師で君は俺の生徒で…、なのに…その、講師の俺がこんな事を言っていいものなのかとずっと悩んで…、つ、つまり、何が言いたいかというと……』
それは、大学2年に上がったばかりの春だった。
薄手の上着がいるすこし風の涼しい季節。
先生からのお誘いにわたしは浮き足立っておろしたてのパンプスで街に繰り出した。
ちょっとこじゃれた喫茶店、渋いBGMが耳に心地良く馴染んで。
向かい側に座ってわたしを見つめて、先生は慌てていた。
大学では決して見れないその姿に愛おしさが募る。
先生が言おうとしていることが皆目検討つかず、わたしはただ先生を見つめ返す。
そして先生は言った。
『つまり…君が好きだ』
先生は…わたしの事を好きだったんじゃないの?
『君の事、大切にする』
あの言葉は、嘘?
コーヒーカップに添えられた左手にはまる指輪に窓からの光が反射する。
そんなもの、あの時にはなかった…。
『真弓を忘れようと、君の働くあのバーに高嶋さんと一緒に行ったんだ…けど、やっぱり無理だった』
高嶋さんて…誰の事。
忘れようって何を。
『あの人は新しい彼氏か…?』
誰の事を言っているの?先生、私は今、あの喫茶店で、先生の告白を受ける、幸せな時を迎える大学2年生のわたしだよ…。
どうしてそんな事を言うの、せんせい。
「……ん、時森さん!」
肩が揺すられた振動で一粒の涙が頬を濡らす。
その感覚がリアルに感じられて目を開けた。