失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
見ず知らずの人様のお家は駅にわりと近い所にあって、くたびれた頭と身体でも誰かさんが親切に書いてくれた地図のおかげで楽々たどり着けた。
「誰かさんじゃなくて…羽賀さんだって」
電車が来るまで駅のベンチに腰掛けて地図と一緒にずっと持っていた名刺に目をやる。
彼の名前と会社の住所、電話番号が印字されていて、更に裏には懇切丁寧に彼の携帯の電話番号とメールアドレスが手書きで残されていた。
てっきり学生じゃないか、と思ったけれどデザイン会社にお勤めの立派な社会人ようだ。
しかし、名前を知っても思い出せない。
わたしは鞄の中から携帯電話を取り出し電話帳からお目当ての番号をプッシュした。
呼び出し音が数回鳴った後耳に届いたのは気だるそうな声。