失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
彼女と彼とわたしと
「なんか悩み事?」
エリザでの演奏後、いつものようにカウンターに座る私に酒井さんがそう聞いてきた。差し出されたハイボールを受け取って、動揺を隠すように口に運ぶ。
「なんか元気ない気がして」
言いたくないなら良いけど、と付け足す酒井さん。
「ちょっと、友達と喧嘩というか・・・なんというか・・・」
「それは、最近来ない彼と関係してるのかな」
「酒井さん、鋭いデスネ」
思えば、酒井さんは私が悩んでいたり落ち込んでいたりしていると決まってさりげなく声をかけてくれる優しい人生の先輩。
「もはや職業病だね」
「・・・異性間の友情って難しいなぁと」
「どういう風に?」
促されるまま、私はぽつりぽつり話し始めた。