失恋レクイエム ~この思いにさよならを~
この思いにさよならを
「酒井さん!明日の夜歌わせてください!」
羽賀さんからのメッセージの後、私はエリザに電話してそう叫んだ。少し置いた後、「いいよ。この間ドタキャンしちゃったお詫びね」と返ってきた。明日は私の出番じゃないけど、演奏がある日でも無かったからもしかしたら、と思いダメもとでお願いしてみたのだ。
お礼を言って電話を切った後、私は羽賀さんに「明日、8時にエリザで待っています」と送った。
和也に、好きな人は居るのか、と聞かれて浮かんだその人を思い浮かべる。
「羽賀さん・・・」
居酒屋で、私を助けてくれて、追いかけてまで来てくれた彼の優しさを素直に受け入れられなかったのも、無神経だと苛立ったのも、全部、この自分の思いからだったんだ。
どんだけ、鈍感なの自分・・・。
今更ながら呆れてしまう。
でも、きっと、心のどこかで気づいていたのかもしれない。この気持ちに気づいてしまったら、今までの心地よい関係が終わってしまうという不安が、気づかないうちに蓋をしていたのかも。
でも、もう壊してしまったから。
なら、最後にこの気持ちを伝えたいと思った。