約束の場所【短編・完結】
「来年この桜が咲いたら…
その時は一緒になろうね」

「そうだね
夫婦(めおと)になろうか」

淡い約束を
交わしたふたり

それからほどなくして
殿の側室として
城での生活を
余儀なくされた千

離れて暮らす
景丸のことを想い
恋焦がれた日々

夫婦になろう

その約束から一年後
桜の咲いた日
初めて殿の
『夜のお相手』を
することとなった

本来ならば
満ち足りた幸せの中で
景丸の元へ
嫁ぐ日であった

どんなに願っても
その日はもう二度と
やってこない

悟った千は
景丸に別れを告げた




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