約束の場所【短編・完結】
どんなに探しても
見つけられなかった
ふたり

でもふたりは
意外にも
城から
目と鼻の先で
生活していた

目を閉じると蘇る
過去の記憶

子供たちの歓声が
響き渡る庭

それを
笑顔で見守る
千と小雪

姫ではなくなった
千だから

小雪も侍女では
なくなった

その昔のように
仲のいい友に戻った

同じ歳の子供を持つ
母となった

「さあ、ご飯にしますよ!」

「「はあい!」」

駆け回っていた
子供達は
一斉に建物の中に
入っていった

静けさの戻った
庭の先

薄紅色の花を
今年も咲かせた
城の桜を

目を細めて見つめる
千の姿が
そこにあった
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