約束の場所【短編・完結】
しかし

時が巡り
巡りゆくほどに
伝説は
過去になってゆく

もはや
ここが千の眠る
場所であることを
知る者はいない

朽ちてゆく建物と
朽ち果ててゆく
千の記憶

それでも

『千の桜』は
空に向かって
枝を伸ばした

未来に
手が届くようにと

幾つもの時代を
艶やかな花で
彩りながら…

精一杯に
生きた

いつか
彼らと出会う
その日のために

いつか
彼らに見つけてもらう
その日のために

あの時と
何も変わらぬ
美しさで



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