蜜色オフィス


料理するのかな。
私の部屋なんか、調味料って分類されるものはマヨネーズくらいしかないのに。

だいぶ思考がそれながらも一回り見渡して、視線が宮坂の姿に戻る。

男の一人暮らしにしてはかなり綺麗にされている部屋は、落ち着いた色でまとめられていた。


「えーっと、ここって宮坂の部屋?」
「……俺の部屋じゃなかったら、二人して不法侵入で捕まると思うけど」


宮坂は面倒くさそうに表情を歪ませながら、少しの嫌味を込めて言う。

パジャマ代わりに来ているのは、白いTシャツと濃紺のジャージ。
オレンジのラインが入ったジャージが意外だったけど、でも、似合ってる。
知らない宮坂を見て、少しだけドキドキする。

“孤立王子”ファンからすれば、超レアものなんだろうな。


「宮坂もそういう格好するんだね。なんか意外」


宮坂がますます顔を歪める。
眼鏡越しじゃない瞳は、私を捕らえたまま不機嫌さを表していた。



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