蜜色オフィス
悪い意味でドキっとした心臓を、落ち着かせる。
あの人はもう他人だ。あかの他人。
もともと他人だけど、それ以上に他人。
向こうだって、私を騙してたって白状した以上、これ以上私に関ろうとするとは思えないし。
―――でも。目が合うと、沖田さんはなぜかニコって笑った。
……金曜日の夜の事、忘れてるわけがないのに。
「おはよう。芽衣。
それと、福田くん……だっけ?」
「あ、はい。福田です。
……つぅか、沖田先輩、芽衣先輩と仲いいんですか?」
福田くんがそう聞いたのは、沖田さんが“芽衣”なんて呼んだから。
今までは、社内で呼び捨てにした事なんかなかったのに。
第一、社内にバレたらまずいって言ったのは沖田さんの方だ。
それに、金曜日に別れたのに、なんで今さら……?
不思議っていうか、不気味。
嫌な予感がする。
とりあえずこの場から逃げよう思って、福田くんの腕を掴む。