蜜色オフィス
人の恋路に気付いて、それをニヤニヤしながら見てるなんて、それ以外考えられない。
梢は、フォークを揺らして「違うって」って、笑いながら答える。
「純愛だなーって感動的だったし、本当にこっそり応援してたんだって。
それに多分、宮坂が態度に出さないのは、芽衣のためなんだろうなって分かったから、それも健気に思えたし」
「なんで私のためなの?」
「だって、宮坂の気持ちに気付いたら、芽衣はきっと普通に仕事できなくなるでしょ。
宮坂は、例え振られたって仕事できるだろうけど、芽衣は罪悪感とか感じて気を使うのが目に見えてるもん」
「……」
「宮坂がどれだけ熱心に仕事してきたかを芽衣が知ってるのと同じで、宮坂だって芽衣が仕事頑張ってるのは知ってるハズでしょ。
自分のせいで芽衣の今まで築き上げてきたモノが壊れるのは嫌だったんじゃない?」
私が見てきたのと同じように?
今、私が宮坂に迷惑かけたくないって思ってるのと同じみたいに、宮坂もそう考えてくれてたって事?
だから、何も言わずにただ隣で見ててくれたの……?
私にさえ、気付かせないように。