蜜色オフィス


「……私が仕事で築き上げてきたモノなんて、宮坂に比べたら全然たいしたモノじゃないのに」
「それさえ守りたいんだよ。ね、健気でしょ?
思わず見守りたくなるでしょ? プラトニックでしょ?
そんなの知っちゃったら、酔いつぶれた芽衣を届けたくなるでしょ?」
「じゃあ……、私がうっかり泊まったりしたから態度に出すようになったのかな」


この発言こそが、“うっかり”だったって気付いたのは、梢の弾けるような笑顔を見てからだった。
こっちが一瞬声を失うほどに満開の笑顔の梢なんて、初めてかもしれない。


「な、なに?」
「態度に出すってなに?! なんかされたって事だよね?!
え、何したの? 宮坂!」
「さ、されてないっ!
ほらっ、金曜日の夜、追跡に付き合ってくれたりしたから、それの事言っただけだってば!」


梢は「あやしい」ってブツブツ文句を言いながら、パスタをフォークにくるくると巻きつける。


「急に態度に出すようになったのは、芽衣が沖田さんとなんか付き合ってるって知ったからなんじゃない?
沖田さんの女癖の悪さって、男の間では有名っぽいし、放っておけなかったのかもね。
それに、他の男に黙って渡すのもイヤだろうしね」


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