蜜色オフィス
ニコっと、冷たく笑う沖田さんが、怖くないわけじゃない。
沖田さんと関係を持つなんて、絶対にイヤ。
だけど、それ以前に、私が沖田さんの言うとおりにする必要なんかない。
沖田さんが、なんでこんなメリットもない誘いに私が乗ると思ってるのかは分からないけど。
宮坂と沖田さんの関係知りたさだけに、沖田さんと関係を持つハズがない。
席を立つと、椅子がカタって音を立てた。
立ち上がった私を、沖田さんが見上げる。
「楽しそうにしてるところ、邪魔するみたいで悪いですけど。
私が沖田さんと関係を持たなくちゃいけない事情なんかないですから。
帰らせてもらいます」
そう言って背中を向けた途端。
ぐっと強い力で肩を掴まれた。
そして、振り向くよりも先に、耳元でささやかれる。
「俺が、なんで入社してすぐに第一営業課なんていうエリート集団に入れたのか知ってる?」
歩き出そうとしていた足がピタっと止まる。