蜜色オフィス


背中を押す沖田さんに促されるまま、エレベーターに向かって一歩踏み出した時。
後ろから声が聞こえた。

ロビー中に響くような声が。


「沖田さん!」


振り向いた先にいたのは、少し派手な女の子だった。

20歳そこそこに見える女の子は、明るい茶色の髪を巻いていて、シンプルな白いカットソーにジーンズのミニスカートって格好だった。
スっと伸びたきれいな足には、黒の高いヒールをはいてる。

会社にはいないような、派手な感じの子。

カツカツと音を響かせて沖田さんの前まできた女の子は、甘えるように沖田さんのネクタイを触った。


「沖田さん、やっと見つけた~。
一度会ったきり、全然連絡してくれないんだもん~」
「瑞穂ちゃん……、どうしてここが?」


焦った様子の沖田さんが聞くと、“瑞穂ちゃん”が後ろを振り向く。
そして、こっちに歩いてくる人物を指差した。


< 131 / 302 >

この作品をシェア

pagetop