蜜色オフィス
「早川がどうかは知らないけど。
俺は好きじゃなきゃキスなんかしないし、抱いたりなんかしない」
「わ、私だって、好きじゃなきゃしないもん!」
私もそうだって伝えたくて慌てて言うと、宮坂がじっと見る。
その瞳は、疑ってるみたいだった。
「でも、初めてした時は俺の事好きでもなかったのに流されてたろ」
初めて……って、オフィスでキスしちゃった時の事?
言われて、考えてみる。
……確かに。
あの時は、好きとは意識してなかったかもしれない。
宮坂のキスをなんで拒めないんだろうとは思ってたけど……、“好きだから”って答えには辿り着けずにいた。
沖田さんの優しい手とか、宮坂の上辺の意地悪だとか。
色んなモノが邪魔をして、それを見えなくしていたから。
けど。
「でも……、自分の気持ちが分からなかっただけで、どこかで宮坂を意識してたんだと思う。
私は確かに流されやすいけど……、好きじゃない人のキスを気持ちいいと思ったりはしない」