蜜色オフィス
「本当、あのタフさには感心するよ」
ため息混じりに言った宮坂が、丁度ついたエレベーターに乗り込む。
私もそれに続くと、宮坂の指が5の数字を押した。
「社長も営業車に乗ったりするんだね」
エレベーターのドアが閉まる。
「社長は割とフットワークが軽いから。
少なくとも沖田よりは営業活動もしてると思う」
「……そうなんだ」
沖田さんが宮坂を目の敵にしてるのは、あからさまだけど。
宮坂も、なんだかんだ言いつつ、沖田さんの事を少し意識してるみたいに見える。
ふたりの関係って、なんなんだろ。
ずっと不思議だった事を今聞いてみようか。
そう思って、隣に立つ宮坂をこそっと見てみたけど……。
なんか、絶対にちゃんと答えてくれなそうだし。
“そんな事より”とか別の話題に切り替えられちゃって、福田くんの二の舞になりそう。
免許ないし、私にはガソリンは無理だ。