蜜色オフィス


5F。営業一課二課、そして会議室やら資料室が集まるフロア。
しかも、始業時間20分前っていう、わんさか社員がいる状態。

いくらさっきの言葉を注意してやりたくても、こんな場所でベッドの上での事情とか、プライベートな話をできるほど図太くない。

付き合ってるって事を隠すつもりはないけど、ある事ない事を事細かに噂されたりしたら、仕事だってやりにくくて仕方ないし。

そう考えると、文句を言おうとして開いた口を閉じるしかなくて。

……完全に不発だ。

不貞腐れながらもエレベーターを降りようとした時。
数歩前で足を止めた宮坂が、身体半分だけ私を振り返った。


「今度、招待してくれると嬉しいんだけど」


宮坂に文句のひとつも言ってやりたくて仕方なかったハズなんだけど。
不発感にイライラしてたハズなんだけど……。


「……料理はあんまりっていうか、全然できないんだけど、それでもいいなら。
調味料とかも、ケチャップとマヨネーズくらいしかないし」



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