蜜色オフィス
可愛くない返事をしたのに、宮坂が嬉しそうに微笑むから。
イライラを保つのが、難しくなる。
「早川の部屋に行く時は、俺が手土産で何か買っていくよ」
「……助かります」
正直、本当に料理できないから、変に頑張ったりしたら絶対に空回るのが自分でも分かる。
だから素直に頷くと、宮坂が笑う。
「とりあえず、今日は俺が招待するよ」
「え……」
想像もしてなかった答えが返ってきて聞き返すと、宮坂が「都合悪い?」って聞く。
「あ、ううん。大丈夫だけど……」
「夕飯も俺が作るから」
「え、宮坂が?」
「仕事の様子を見て、待ち合わせ場所だとかはメールするよ」
微笑んだ宮坂が、背中を向けて歩き出す。
その背中をぼんやりと見つめた後、「うん」って頷いて、私も歩き出す。
にやける顔を隠すのが大変だった。