蜜色オフィス


ザ・紳士って風貌の社長は、スーツがよく似合う。
渋いっていうか、落ち着いてるっていうか。
それなのに異性としての色気があるっていうか。

とにかく、身びいきじゃなくて魅力的な人だ。

広報が作った社内新聞に、先月誕生日を迎えた社長は今年で53才になったって書いてあったけど……。
今頃になっちゃったけど、誕生日おめでとうございますくらいの事を言った方がいいのかな……?

っていうか……、その前に、なんで社長が?!

パニックになって何も言えずにいる私に微笑んだ社長が、一歩私に近づく。

向かい合うように2列に並んでるデスク。
それを挟んで私の正面に立った社長が、顎を指で撫でる。

何かを熟考しているような……、それでいて楽しんでいるような、そんな顔だった。

そして、私の事を値踏みするみたいに見た後、目を合わせて笑顔を見せる。


「君が早川くんか」
「は、はい……」



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