蜜色オフィス
冷静な時間を割り出す宮坂に感心しながら、自分の頭でも計算してみる。
10分で準備するなんて……、どう考えたって不可能に感じる。
第一、昨日お風呂も入ってないし、メイクだって落として直さなくちゃだし、髪も服も……。
ダメだ、絶対間に合わない。
「だめ。絶対無理。あー……どうしよう、部長に怒られる……」
さーっと頭の中が真っ白になっていった私を見て、宮坂は少しだけ黙った後、くっと喉の奥を鳴らした。
笑い声にも取れるそれに顔をあげると、笑みを浮かべた宮坂と目が合って……。
宮坂の珍しい笑顔に首を傾げた。
「……なに?」
「いや、まんまと騙されてるから面白くて」
「……なにが?」
わけの分からない事を言う宮坂に、ますます不思議になって眉を潜める。
すると、まだ笑みを零す宮坂が、テレビボードの隅に置いてある卓上カレンダーを指差した。
「今日、何日だか分かる?」
「だから、もう酔ってないってば。
えっと……、6月11……」
「そう。6月11日。……土曜日」
「土……」