蜜色オフィス


「……ん、」


そして一ヶ所にぴりって痛みを残して、その部分を舌でなぞってから顔を上げた。

顔が、熱い。
顔っていうか……、全部が熱い。

キスしただけなのに。
ちょっと触られただけなのに。

宮坂の雰囲気に酔ったみたいに、身体中が熱い。

そんな私に気付いたのか、宮坂が笑う。


「そんな顔して、俺の事誘ってるの?」


宮坂の唇と手が、優しく私に触れる。
頬、おでこ、鼻先、目尻。

こんなの、まるで。


「誘ってるのは、宮坂、でしょ……」


罠だ。

どこまでも甘くて、ひたすら心地いい。
宮坂にしか作れない罠。


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