蜜色オフィス
私にも分かる事をわざわざ言ってくるなんて、脅し以外考えられない。
沖田さんが、宮坂の出生の事をネタに理不尽な取引を持ちかけてくるのも
、そして私がその取引に応じるしかないのも、この時点で分かってた。
それでもなんとか回避できないかと挑発したけど、沖田さんは余裕な笑みを浮かべながら、私の目の前まで近づいた。
19時台のオフィス街。
立ち止まってる私たちを、帰宅途中のサラリーマンやOLが邪魔そうにチラチラ見ながら通り過ぎていく。
「なんで、そんなにこだわるんですか?」
聞くと、沖田さんはハハって軽く笑う。
それから、見下すみたいな笑みで私を見た。
「うぬぼれるなよ。
俺は芽衣を特別に想ってるわけじゃない。完全な利用目的だよ。
まぁ、それを悪かったとは思ってる……、」
「―――私じゃなくて、宮坂に。
なんで執拗に宮坂に拘るんですか?
気に入らないなら近づかなければいいのに……、沖田さんは、自分からわざわざ関ってきてる」