蜜色オフィス
もう大人なのに、こんな当たり前の事を、しかもクールビューティで名高い宮坂に怒られるなんて。
あとで梢に絶対笑われる……。
静かな反省をしていた私に、宮坂が声をかける。
「俺、コンビニ行くから部屋出るから……、10分以内に用意が出来るならついでに家まで送ってくけど」
「えっ……、宮坂、車あるの?」
「一応ね。通勤には必要ないし、そこまで必要とはしてないんだけど、譲り受けた車だから売るわけにもいかないし。
たまたまここは駐車場付きだし」
「そうなんだ……」
「あと、9分30秒」
「……」
慌てて用意しようとするも……。
泊まるつもりできてる訳でもないし、お泊りセットなんか持ってる訳がない。
仕方なく、いつも持ち歩いている化粧ポーチの中からコームを取り出して髪をとかす。
肩下20センチほど伸びたストレートの髪は、最近アイロンで巻く事が多い。
梢に薦められるがままに買ったヘアアイロンだけど、今までパーマの経験のない私はすっかりそれにはまってしまって。
ゆるふわの髪型を作るせいで、お陰で毎朝遅刻寸前。
だけど、そのエセパーマも、一晩の睡眠ですっかり解かれていた。