蜜色オフィス
「それに、俺は社長の息子だ。いずれは社長になる。
同じ社長の息子でも、俺とアイツじゃ立場が違う。
どっちを信用するかなんて、天秤にかけるまでもない」
言葉がでなかった。
卑怯だと思うし、そんな事が許されるなんておかしいとも思う。
そんなの、信用じゃなくて権力で従わせてるだけだ。
けど……。
すべては、沖田さんの言う通りだ。
いくら叫んだところで……、沖田さんの存在を前にしたら、誰にも届かない。
―――それがいくら事実だとしても。
「アイツの母親が、社長の浮気相手だって事を一緒に流してやれば、どういう噂になるかぐらい、すぐに想像がつく」
沖田さんは、微笑みながら続けた。
「“母親と同じように、人の恋人を寝取るのがうまい”って」
すべて……、仕組まれてたんだ。
沖田さんが私に告白してきた時から。
あの時から……、沖田さんの宮坂への嫌がらせは、始まってた。