蜜色オフィス


「貧血って、食事でも抜いたとか?
もとから貧血持ちってわけじゃないだろ?」
「えっと……、寝不足だと思う」
「寝不足? 珍しいな」
「……どういう意味? 
その言い方だと、私がいつでもグーグー寝てるみたいに聞こえるんだけど」


苦笑いして言うと、宮坂が視線だけで私を見て、「そういう意味で言ったんだけど」って笑う。


「初めて俺の部屋に泊まった時も、数日前ホテルに泊まった時も早川よく寝てたし。
それに、前、貧血で倒れた時、医務室でもぐっすり寝てただろ。
てっきり寝不足なんて言葉とは縁がないんだと思ってた」
「あれは……っ、初めての時は酔ってたせいだし、こないだは……、宮坂のせいでしょ」



周りを気にして、最後は声が小さくなる。

受付と医務室、それから警備室と備品庫。
あとは広いカフェスペースからなる1Fには、昼休みが終わる今、あまり社員はいないけど、一応。

“ホテル”なんて単語は絶対に危ないし。


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