蜜色オフィス
「……」
鏡で顔を確認して、一応手持ちのメイク道具で誤魔化してみる。
拝借したティッシュを濡らして大体落とした後、ファンデーションを厚塗りした。
パンダ目みたいに広がってるアイラインを落としたくても、ここには絶対にメイク落としなんてものはないだろうから仕方なく。
私が自分の顔と葛藤している間、宮坂は着替え、歯磨き、洗顔を済ませて、玄関脇の壁に寄りかかって待っていた。
それなりに見られるだろうと思われる顔になった私が行くと、宮坂はこっちを少しだけ、でも濃密に見る。
「……なんか変?」
「別に。じゃあ行くけど」
「うん」
こげ茶色の厚い玄関が閉まって、宮坂の手によって鍵がかけられる。
高そうなマンション……。
そんな事を思いながら、すたすたと歩き出した宮坂の後を追った。